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名義預金について

(1)「名義預金」とは 形式的には、被相続人以外の者の名義(妻や子などの親族名義)で預金していますが、 実質的には、被相続人の預金であり、親族の名前を借用しているにすぎない預金をいいます。  
 (具体例)相続税を免れる目的で祖父が孫名義を借用して預金するなど
 
(2)名義預金の現状について  相続税の税務調査で申告漏れが指摘される遺産として預貯金等の割合が大きいので、被相続人が資金を供与して作成された被相続人以外の名義の預貯金口座が存在する場合、 取扱いに注意が必要です。
 
●平成26年度相続税の調査件数 12,406件
申告漏れ等の非違件数 10,151件 (重加算税賦課件数1,258件)
申告漏れ財産の内、現金預貯金等の金額割合は全体の35.7%(1,158億円)

●平成27年度相続税の調査件数 11,935件
申告漏れ等の非違件数 9,761件(重加算税賦課件数1,250件)
申告漏れ財産の内、現金預貯金等の金額割合は全体の35.2%(1,036億円)
 

名義預金の判断フローチャート


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(1)「名義預金」と指摘されない対策とは
①預金の資金提供先が被相続人である場合、贈与者と受贈者の署名押印ある贈与契約書の作成をし、基礎控除額を超えた贈与なら贈与税の申告をすること。  
(注)業主婦の妻のへそくり預金、子や孫の学費や結婚資金の積立預金  というだけでは、名義預金でないと認められないケースがあります。
②預金口座の名義人が、通帳・印鑑・キャッシュカードの保管をし、かつ預金の入出金 管理を口座の名義人がしていること。 但し、預金口座の名義人が未成年の場合は、法定代理人(親権者等)に通帳印鑑などを預けても直ちに名義預金とはなりません。
 
(2)税務調査で名義預金と指摘された場合の対応策について
①関与税理士と協議し、税理士から名義預金とする根拠について説明を受け できれば根拠とされる資料の開示を受けてください。
②名義預金とされる根拠が納得できないときは、相続人側として名義預金ではない理由 を資料を示して説明することも必要です。
③関与税理士とも協議し名義預金という指摘がやむを得ないという判断をしたら、重加算税がかからないよう、ペナルティの軽減を交渉することも必要です。

名義預金かどうか争われた事例紹介

 
1、 預金の届出印鑑の取扱いが問題となったケース
① 平成25年12月10日裁決(国税不服審判所)  
孫名義の預金について、預金開設当時の届出印は被相続人のものですが、その後孫の印鑑に改印 され、孫の両親(親権者)が印鑑を管理し、資金出損者が被相続人とは認められないことから、 名義預金ではないとされました。
② 平成19年4月11日裁決(国税不服審判所)  
被相続人が生前株式譲渡の手続書面に押印した印鑑と、妻名義の定期預金の届出印が、同一の 印鑑であることから、妻名義の預金口座は、被相続人が管理運用していたと認定されました。
 
2、 専業主婦の妻の生活余剰金(へそくり)は名義預金かの問題について
① 平成19年4月11日裁決(国税不服審判所)  
預貯金は妻名義だが、その原資は被相続人が拠出したものであり、妻への贈与を認める証拠もないので、被相続人に帰属すると認められました。仮に被相続人が生活費の剰余金は自由に使ってよいと言われていたとしても、生活費の法的性質は夫婦共同生活の基金であり、妻名義の預金等としても、その性質は失われないとした。
 
3、 子供のための学資や結婚資金について
① 平成18年4月26日裁決(国税不服審判所)  
定期預金の作成目的が、子供らの学資や結婚資金のためであったとしても、預金について子供らの住所変更や改姓の手続が一度も行われていないこと、その預金が子供らに引渡されたのが相続開始後であることなどから、預金の支配権は被相続人ないし管理運用を任された妻にあったと認められ、預金原資は被相続人の所得かから賄われたことからみて、被相続人の預金であるとされました。

4、 遺産分割調停で相続財産に含まれなかった預金について
① 東京地裁平成20年10月17日判決  
相続税務において、相続財産と認められるもの(名義預金等)を、遺産分割調停で相続財産でないと相続人間で合意したとしても、そのことにより税務上も相続財産でなくなるとはいえないとされました。

5、 生前贈与が問題となったケース
① 名古屋地裁平成2年3月30日判決     
被相続人は、相続税の課税を回避するため、家族名義で定期預金の積み立てを開始し、贈与税が かからないよう非課税限度内で定期預金を続けたが、その管理運営払戻は、全て自らの判断で行っ ていて預金名義人が、預金の形成管理などに関与することはなかったから、家族名義の該定期預金 は被相続人の預金であるとされました。   ② 平成11年3月22日裁決(国税不服審判所)  
被相続人には子らに定期預金の預金資金を贈与する意思があったこと、預金額に見合う 贈与税の申告と納税があったこと、子らは毎年の預金額及び贈与税申告を承知していたこと、 被相続人に定期預金の通帳印鑑の管理を委託していたと受け取られること、相続開始前に被相続人から預金通帳を受け取ったことからして、贈与がなかったとはいえないとされました。
 

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この記事の監修者

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弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)

小林 幸与(こばやし さちよ)

〇経歴

明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。

日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。

豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。

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